「テーパリングへの影響について知りたい」
この記事では、こんな疑問にお答えします。
この記事を書いているのは、
・2021年7月のFOMC声明と雇用統計について解説しています。
・雇用統計とFOMC声明の発表内容について説明しています。
・株式市場への影響やポイントについて解説しています。
新型コロナウイルスの感染拡大により、世界各国で異次元の金融緩和を行った結果、NYダウが過去最高値を更新する等、株式市場の高騰が続いています。
そのような中、投資家の間では「テーパリング(量的緩和の縮小)決定による株価下落がいつ起こるのか」が注目されることに。
そこで今回は2021年7月のFOMC声明と雇用統計結果を踏まえ、テーパリングに向けた議論がどのように進んでいるかまとめてみました。
FOMC声明と雇用統計についての概要については過去記事をご参照ください。

2021年7月FOMC声明

FOMC声明概要
7月27日~28日の定例会合の決定内容や議論の結果として発表された内容は下記の通り。
①政策金利を0.00~0.25%に据え置くこと
②量的緩和政策を維持すること
③米経済が政策目標に向かって前進しているとの景気判断
④テーパリングについては、その手法や縮小ペースについて議論を開始
①と②については従来と同じ政策を維持することを発表したもので、サプライズはありませんでした。
現在の量的緩和政策は、「米国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券を月400億ドル購入し続けていく」というものです。テーパリング(量的緩和の縮小)とは、この購入額を段階的に縮小することを意味しています。
③と④については、従来の方針から多少の軌道修正が行われました。
(従来方針)
「雇用の最大化と物価安定に向けてさらなる大きな前進を遂げる」まで量的緩和策を続けるとしていましたが、
(今回発表)
「経済はこの目標に向けて前進しており、今後の会合で進捗評価を続ける」と初めて表明しました。
会合後の記者会見
パウエルFRB議長による会合後の記者会見でのコメントについても確認してみましょう。
デルタ変異株について
「感染の大きな波は2回目となるが、経済への影響は思ったよりもはるかに小さい」と経済回復に自信をみせながらも、
「利上げを検討するのは時期尚早」と述べました。
⇒雇用の回復が前提との従来からの考えが反映されています。この発言を受け、一時的に株式市場にプラスの影響がありました。
テーパリングについて
テーパリングについても以下のように触れていました。
・資産購入のペースや内訳など(量的緩和政策)を今後どのように調整していくかを初めて深く掘り下げた
・今後複数の会合で経済状況の進展を評価する
・資産購入の変更時期は今後のデータ次第
⇒テーパリングについて議論が開始されたことは示されるも、決定までには複数回の会合が必要であり、早くても2021年11月以降となることが分かりました。
ちなみにFOMCの今後の日程は、9月21~22日、11月2~3日、12月14~15日となっています。
2021年7月雇用統計

2021年8月発表 7月雇用統計結果
2021年8月6日に発表された7月速報結果は上記の通り。
失業率は5.4%と市場予想5.7%を下回る結果となりました。失業者数は前月から78万2千人減少し、失業率は前月より0.5%改善しました。
非農業部門雇用者数は94万3千人増加し、市場予想84万5千人を大きく上回る結果となりました。内訳をみてみると、民間部門は70万3千人増で、そのうちサービス部門で65万9千人増でした。特に娯楽・接客業が38万人増と半分以上を占めており、個人消費を中心とした本格的な経済回復を裏付ける結果となりました。
米雇用の今後について
新型コロナの影響で2020年3~4月に失われた非農業部門の雇用が2,200万人強といわれています。2020年5月以降、1,600万人弱と約8割の雇用が回復したことになります。
まだ十分な回復とまではいえませんが、これから更に回復が期待できそうです。
手厚い失業給付金により職探しを行わない人が多数いることが問題視されていましたが、2021年9月に失業給付金の期限を迎えます。いくつかの洲では6~7月に前倒しで給付をやめています。
また、学校再開までは子供の世話をする必要があるために職場復帰できない人も多数います。これについても、2021年9月前後の新学期から都市部の多くの学校でも対面授業の再開が見込まれているため、主婦層を中心に雇用の回復が期待できます。
株式市場への影響
(TradingView HPより NYダウ:青色、ナスダック:緑色、長期金利:オレンジ色、金:黄色)
FOMC声明と雇用統計結果の発表を踏まえ、7月末からの主な指数の推移を確認してみます。(上記チャートは過去1カ月の増減、長期金利は金利推移を示しています)
7月28日のFOMC会合以降、ナスダックがすぐに反応し上昇しました。ナスダックはハイテク株が中心であり、高PER株が多いことから、長期金利上昇が株価下落につながりやすいと言われています。
今回のFOMC声明でテーパリングの決定までに複数回の会合が必要と示されたことで、本格的な金利上昇にはまだ時間がかかると判断されたことが主な要因です。
その結果、長期金利も雇用統計結果が発表されるまでは低下傾向にありました。
しかし、8月6日に雇用統計結果が発表され、市場予想より労働市場の改善が進んでいることが示されると、年末か年始にテーパリングが開始されるシナリオが復活してきました。
その結果、米10年国債利回り(長期金利)が1.14%から1.34%付近にまで上昇。雇用統計発表と同時にナスダックが急落し、金価格も下落を続けています。
一方、NYダウは労働市場の改善により、米経済の本格的な回復が見られる中、景気敏感株が買われ、過去最高値を更新しています。一方、テーパリングも意識されていることから、小幅な動きとなっていることが分かります。
まとめ

今回は2021年7月のFOMC声明と雇用統計結果を確認し、株式市場への影響をみてみました。
最後に重要ポイントをまとめると
・コロナ感染の再拡大はあるものの、米経済は本格的な回復を続けている。
・労働市場(雇用)も予想を上回る改善が見られている。
・経済と雇用の改善により、テーパリングの議論が本格化しそう。
・複数回の会合が必要と示されたため、2021年11月か12月には大きな決定がされるのでは。
・ナスダックが早くも下落基調となり、株式市場への影響も出始めている。
市場は将来予測を早めに織り込む傾向があることから、今後の株価への影響の大きさを予想することは難しいですね。
例年8~9月の株式市場は低迷しやすいと言われています。個人的には、当面はキャッシュを厚めに確保しつつ様子見をしながら、次に買う銘柄を検討していこうと考えています。

